2018年7月31日(火)午後1時〜5時、(公社)日本コンクリート工学会 半蔵門ビル11階において「第2回技術セミナー」が開催された。
セミナーの内容・概要を報告する。
小野会長挨拶
1−JCD(日本コンクリート診断士会)法人会員の保有技術紹介 3編
表面保護ケイ酸塩系表面含浸工法「エバープロテクト」及び表層吸水量試験機「POROSiT」
株式会社エバープロテクト 高島達行氏
コンクリート構造物の長寿命化や耐久性の向上のため、新設コンクリート表層部の初期性能向上、予防保全、既設コンクリートの性能回復、維持保全を目的とした「ケイ酸塩系表面含浸工法」の紹介である。
そのメカニズムは、セメント水和物に近い組織のC-S-Hゲルの生成により、有害空の隙を無害空隙(ゲル空隙)に緻密化し、表層を改質することである。加圧透水試験により緻密化、改質されたことが検証されている。
中性化、凍害、塩害等の改質(侵入因子のプロテクト効果)、0.2mm以下のひび割れへの改質効果、鋼材腐食抑制にも効果がある。
コンクリートの表層品質を評価することで構造物の耐久性能を推測しようとする目的で非破壊で簡単に表面の吸水量を測定する試験機の紹介である。
単位面積当たりの吸水量の時間的変化量を表面吸水速度と定義し、表面品質を評価するものである。
株式会社エバープロテクト 高島達行氏
橋梁等塗膜中の有害物質調査について
株式会社太平洋コンサルタント セメントコンクリート営業部分析営業グループ 山崎剛氏
橋梁における鋼構造物には、対象物の保護(防食・防錆)や美観・美装等を目的として塗装が施されている。この塗装物質には有害物質(鉛、クロム、PCB等)含まれ、(1)塗膜剥離作業者の健康障害の防止、(2)環境汚染防止、(3)旧塗膜の適正な廃棄物処理のために調査をする必要性が生じた。(厚労省の通知より)
→分析方法、判定基準、対処方法名地について説明があった。
あと施工アンカーの非破壊検査装置「アンカパルテスター」
株式会社アミック 高橋雅則氏
インフラ設備の固定、耐震改修等に使用されている「あと施工アンカー」であるが、施工時の品質確認や適切な維持管理が行われていないと笹子トンネルの天井板の落下事故に代表されるような重大事故に繋がる。安全・安心に対する要求が大きい。
現状は、目視・接触打音検査(全数自主検査)、非破壊引張検査(抜き取り検査)が行われているが、課題があり有効な新技術が必要とされている。
「アンカーパルステスター」は、施工時に完全非破壊検査、イニシャルデータが維持管理に使用できる。等の特徴を持ちインフラ構造物の生産性向上を図ることができる。本技術は、@電磁パルス法により、定着部の健全性を評価する、A超音波パルス法により埋め込み長さを測定する、測定者の技量差が出にくく、全数検査が容易に行えるのが特徴である。
2−シールドトンネルの設計・施工〜維持管理
佐藤工業株式会社 土木事業本部 技術統括部長 早川淳一氏
技術統括部長 早川淳一氏
・シールド工法の歴史、定義
・覆工の設計
・シールド工法施工フロー
・シールド機の計画のポイント
・シールド技術の多様性と新技術
・シールド掘削管理技術
・維持管理
以上7編について講演をいただいた。大正6年、日本最初のシールドトンネル「折渡隧道」から始まり、様々な視点からトピックスを交えて具体的に説明をしていただいた。資料は必見である。
3−画像解析を用いたコンクリート構造物のひび割れ点検技術
大成建設葛Z術センター 社会基盤技術研究部・材料研究室 堀口賢一氏
橋梁の点検基準:点検は5年に1回の頻度を基本とし、点検は近接目視により行うことを基本とするとある。「近接目視」→肉眼により部材の変状等の状態を把握し評価が行える距離まで接近して目視で行うこと。
この様な背景から、@ひび割れの確認や状態の変化を定量的に評価、Aばらつきが少なく、定量的な評価が容易に行う、B容易に近づけない場所への対応(危険作業やコスト削減)が新しい技術の要請がある。
ウェーブレット変換を用いた画像解析技術を使用することで
・ひび割れ分布を客観的に評価
・ひび割れ幅ごとの延長が定量的に評価
・画像の明暗の影響が受けにくく、ひび割れ検出の再現性がよい
従って、ひび割れの経時変化を定量的に把握
・高所作業が不要となるため作業の安全性、生産性が向上
が可能になったことの実証実験を紹介された。
今後の実用展開が期待される。
4−土木研究所版「コンクリート構造物の補修対策マニュアル(案)
国立研究開発法人土木研究所 先端材料資源研究センター 片平博氏
片平博氏
土木研究所で整理された補修マニュアル(案)が紹介された。
主な劣化要因について、人間に例えたら
・塩害 … 癌:内部から
・中性化 … 老化:表面から
・凍害 … 老化:表面から
・アルカリシリカ反応 … 成人病
等と捉えて、現実・実態・Realism、@維持管理では予想しなかったこと、A考えていなかったことが問題になっている。これら踏まえて
1.重大な劣化(の疑い)かどうかの判断
・現場をよく見る
・変状の説明が的を得ているか?
2.補修の方針を確認する
・補修方針が明確に説明されているか
・時間的な要素も重要(劣化速度、供用年数との関係)
3.各種補修工法の得失を理解する。
が大切なこと。
マニュアル(案)の構成をもとに、具体的に説明があった。
新東産業株式会社 仲田昌弘 コンクリート診断士・東京コンクリート診断士会会員