2014年12月26日

生活習慣のリスクマネジメント

「生活習慣病」という用語が社会で使われてから、「生活習慣」が病気の原因であったり「生活習慣」そのものが悪者であるかのような風潮があります。
今回はビジネスリスクマネジメント(リスクマネジメント協会)に連載されたコラムより、「生活習慣」は自らの生活機能を向上させるには必須の「ツール」であると認識し、「生活習慣」を生活機能の生理からの視点でとらえる“生活習慣リスクマネジメント”の具体的な処方を紹介します。

成人病と生活習慣病 
1960年「国民所得倍増計画」以降、高度成長を遂げた日本経済は国民の病気の傾向を徐々に変化させます。「脳卒中、がん、心臓病」等が全死因の上位を占め、40〜60歳の働き盛りに発症するケースが多くなり“三大疾病”=「成人病」と言われるに至ります。
「このような疾病リスク」を行政的にマネジメントする必要性から、リスクを左右する影響因子の主要因を「加齢」と固定することで疾病リスクを低減することを図られます。いわゆる成人病と位置付け、疾病リスクのマネジメントとして集団検診による早期発見、早期治療が有効とみなされ実践されてきたことです。
このリスクマネジメントは一定の成果をあげましたが、社会全体が高度成長期から変化するにつれて、疾病リスクを左右する影響因子として「加齢」より個々人の「生活習慣」を重視する事態に直面することになるのです。

1996年、公衆衛生審議会が厚生省に生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について意見具申されます。成人病には疾病の発症や進行に個人の生活習慣が深く関与していることが明らかになり、生活習慣の改善や患者のQOL“Quality of Life / 生活の品質”に着目した予防への取組みの必要性が浮上することになります。疾病別に明らかになった生活習慣との関連を集約して、(1)生活習慣改善の実行可能な手法の提示、(2)改善実行の定着を促す、(3)患者のQOLの向上を目指すといった対策を推進することになります。経済を中心とした社会環境の変化に応じて、発症リスクマネジメントにおけるアセスメントの内容に変化が生じているということです。  

20141224-001.gif
図―1 疾病リスクマネジメントの基本フレームワーク(成人病)


疾病リスクマネジメントの基本フレームワークは「理想的な健康状態」を前提に設定し、「好ましくない影響を及ぼす危険因子」のひとつとして疾病リスクを定義、分析を行うなかで成人病の場合は「加齢」が主要な影響因子でしたが、生活習慣病では「生活習慣」になります。実践するリスクマネジメントは、「理想的な健康状態に好ましくない病気や障害」のリスクの消去・低減化・排除・移転が中心課題であることは変わりません。しかし、医療を提供する側だけのマネジメントから医療を受ける側のマネジメントも必要とすることが新たに加わります。
その後、WHOにおける「健康」の定義の変化で疾病リスクマネジメントの基本フレームが変わります。「理想的な健康」を前提ではなく「生活の動的プロセス」に焦点を当てたライフリスクを生命現象における不確定性の作用及び生活(人生)の過程での不確実なものの影響と定義されます。
「健康」というのは、生活の動的プロセスにおいてライフリスクをうまくマネジメントすることで獲得できるものであると整理されました。
     
20141224-002.gif
図―2  疾病リスクマネジメントの基本フレームワーク(生活習慣病)
  


行動生態
さて、この「生活の動的プロセス」とは… 「行動生態」:エソス、しきたり・習わし・気立て・気分・性向・性分・性格・気質・品性・風俗・風習・生活様式のような多様な意味を持ちます。
人間の体は、約60兆個の細胞と常在微生物群から成り立っていると言われ、人体の行動生態は先天的行動生態(天然・自然の力の働きによって与えられる生物の生理現象)を生理的円満を維持しようとする行動と後天的行動生態(大脳が関与する行動生態)が双方向で社会の中で機能している行動プロセスです。

生活習慣の役割
人の生活機能は、先天的行動生態が基礎になりますが後天的に経験を通じて習得していく習慣があることです。先天的行動生態(身体知)に後天的に行動生態を付加し、脳の中に行動ソフトを形成・保存されます。私たちの日常生活の行為のほとんどはこの行動ソフトによるものと言われています。
日常の行為(例えば、起床して洗顔、排尿・排便、食事の摂取の繰り返している行為)はほとんど習慣化され「習慣ソフト」として形成されています。ところが、環境がかなり異なる異郷の地に生活の場が移った場合、今までの「行動ソフト」が通用しなくなり、異郷の地を身体で感知・経験しながら書き換える必要性が生じてきます。そして、この脳の中に形成された「行動ソフト」は固定化せずに、常に環境の変化に応じてヴァージョンアップしながら更新していくものとなります。このように行動生態のプロセスは、日常生活の中で様々な生活機能にオーガナイズしていくことになります。従って、生活習慣のリスクマネジメントは常にライフリスクの為に準備をしておかなければならないことになります。
   
20141224-003.gif
図―3 行動生態と生活機能のフレームワーク
 

さて、どんな準備(道具)が必要かについては、「運動の仕方」「食事の仕方」「休養の取り方」「お金の使い方」そして「ものの見方・考え方」等・・・。
こういったものについて、次回から具体的に説明をしていきます。

日本リスクマネジメント協会正会員 仲田昌弘



posted by 新東産業 at 09:00| 徒然CSR考座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする