2010年01月18日

経済発展の原動力はイノベーション… “シュンペーターのイノベーション経済学より”

リスクマネージメント講座に中野明氏「ノンフィクション作家」が掲載しているコラムから一部を紹介します。


ケインズ経済学では、不況の原因は有効需要の不足にあると考えます。従って、有効需要は投資と消費からなることから、投資か消費のいずれか、または双方を高めることで有効需要を拡大し不況を克服することになります。いわゆる政府による投資、公共事業の推進が不況対策に効果的であることは論理的な考え方です。しかし、社会が停滞感を克服する方法を公共事業以外に求めることはできないだろうか?その一つの解がイノベーションの推進であり、イノベーションこそが経済発展の唯一の原動力と述べたのが、ケインズと同時代を生きたシュンペーターであります。

日本経済は今、長い停滞期にあり経済が低迷、経済発展が思うように進まない状況にいます。日本ばかりか世界全体が経験したことのない経済停滞・収縮にさらされています。まさにピーター・ドラッカーが言う「断絶の時代」であります。社会は連続的に変化するのが常道ですが時として、連続的な変化ではなく、前時代とは全く異なる価値観や体制を基礎にする社会へ不連続に変化することがあります。例えば、江戸幕府から明治政府へと政権が移る幕末維新の争乱期、第二次世界大戦を境とする社会の常識や制度、生活スタイルの変化等は、前時代と大きく異なるものとなります。いわゆる「時代の断絶」と言えるでしょう。

ところが社会の断絶は、ある価値や制度に基づいた社会はべつの体制を持つ社会に引き継がれ、不連続ながら継続していくことになります。断絶を経験しながら連綿と続いてきたともいえます。この様な観点から新製品や新技術の採用者の累積数と時間の関係を示したグラフ“ロジャーズのS字曲線”を思い浮かべてください。

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S曲線グラフの縦軸を成果「社会で生活する人への効用、生活する人の満足度」、横軸を資金(努力)「社会資本を整備するために投じた労力や資金」と考えると、

・勾配が急な箇所は高度経済成長期
・右側の勾配が緩やかな箇所は成熟し、停滞する過程

グラフの右側に行くほど、同じ1単位の努力(資金)を投じても得られる効果(満足度)は小さくなります。これは、ケインズ理論の投資の限界効果が逓減することに当てはまります。こうして社会は停滞することになります。

この停滞を克服する原動力が従来存在したものに新たものを結合すること“イノベーション”に他ありません。そして、その成長軌道は従来のS曲線の延長線上にあるのではなく、全く新たなS曲線が描かれなければならないでしょう。

「枠や慣行の軌道そのものを変更」する非連続的な発展、「不断に古きものを破壊し新しきものを創造する」活動、創造的破壊活動により新たなS曲線を描くことが、イノベーションによる断絶の時代を非連続的発展が実現されることになるわけです。

今我々が経験している断絶の時代、それは社会が新たな発展、変化を求めているといえます。挑戦が歓迎される時代、新たな軌道を作り出すことができた者が勝者と成りうるでしょう。


生コンクリート業界も氷河期に突入!
JIS規格の改正、企業の社会的責任(特にコンプライアンス)、信頼の回復(安全と安心)、今までの枠や慣行の軌道変更が余儀なくされています。その様な最中、コンクリート技術は化学混和剤によって大きく前進しています。
ここ数年の技術進歩(超高強度コンクリート、コンクリートの流動性保持特性、乾燥収縮低減等々…)は著しい次第です。ところが、技術的なイノベーションによる軌道変更ができても、商習慣、倫理観の変革には残念ながら大きな温度差があります。

VE提案は歓迎されるものですが、コスト優先で“安かろう、悪かろう”の類、“材料特性への過度の期待や誤った使用”の比、リスクを正しくマネジメントする視点(生産者と購入者が同等の立場における協議)が必要と思うこの頃です。私自身は幸いに、良き理解者の方々と仕事をする機会が多く有り難く思っております。

折しも、民主党の小沢一郎幹事長の事件、結末は解りませんが…。時代は大きく変わろうとしています。生きにくい時代と嘆くか、イノベーションの可能性にあふれた時代と思うか、その可能性を追求するのは我々自身に他ならないと思います。


日本リスクマネジメント協会正会員CRM 仲田昌弘


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2009年11月09日

リスクマネジメント協会2009年度 秋季大会 報告 第2弾

リスクマネジメント協会2009年度秋季大会プログラムの中から、(株)帝国データバンク 情報部 昌木裕司氏の講演の一部をご紹介する。


テーマ:企業リスク“会社はこうして潰れていく”−倒産企業の事例分析−


倒産とは?
「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」
と定義づけられ、以下の6つのケースに該当すると認められた場合を「倒産」という。但し、「倒産」は法律用語ではない。具体的には、下図に示す態様区分となる。

------------------------------------------------------------
倒産
------------------------------------------------------------
⊢ 法的整理
  ⊢ 再建型
   ⊢ 会社更生(会社更生法)
   ⊢ 民事再生(民事再生法)

  ⊢ 生産型
   ⊢ 破産(破産法)
   ⊢ 特別清算(会社法)

⊢ 私的整理
 ⊢ 銀行取引停止
 ⊢ 任意整理
------------------------------------------------------------
*再建型 “事業再生ADR”


最近の倒産の傾向について次に示す内容の説明があった。

1.不況型倒産が全体の80%(販売不振、輸出不振、業界不振、不良債権累積…)
2.コンプライアンス違反関連倒産の増加
  違反類型は「粉飾」、業種では「建設」がトップ
3.地域別の動向は、関東、中部、北陸、四国で前年比20%を超える
4.上場企業の倒産が急増し、'08年度は45件、建設・不動産が7割を占めた
5.すべての業種で増加傾向を示し、特にメーカー(自動車、電機、半導体関連の注目業界に広がる
6.'09年4月以降は、上場企業の倒産件数の減少、大型倒産の沈静化、景気動向の潮目に変化が


今後の景気の動向をはじめとする注目点について次の事を挙げている。

1.新政権下での経済対策の影響
2.地域金融機関の地場、中小零細企業に対する融資スタンス
     →“引当金”の増大で収支が悪化、疲弊している
3.「緊急保証制度」「セーフティネット貸付」等の中小企業対策の効果の持続
4.消費不振、価格競争激化による卸売、小売、サービス業への影響
     →デフレ効果による価格破壊
5.円高、需要減による下請メーカーの「メーカー減産関連倒産」の行方
6.市場縮小と供給過剰が深刻化する建設業の倒産動向



本題の倒産企業の事例分析については、次の一件を掲載する。

-----------------------------------------------------------
株式会社アーバンコーポレーションの倒産について検証


・業種:不動産流動化事業、マンション分譲
・売上高:1324億7200万円(2008年3月期)

2008年8月 民事再生法の適用を申請 負債2558億円 
(新興デベロッパーの象徴企業の倒産)

・躍進を支えた不動産流動化事業であったが…、
・地上げ業務に反社会的勢力(暴力団の噂)が金融機関に融資のストップ
   →企業庁の柱であるコンプライアンスに係る案件:メガバンク
    のコンプライアンスリスクが原因
・BNPパリバとのスワップ契約による資金調達の不足
   →特約条項に株価連動(300億円が92億円に変動)
    *BNPパリバの不適正取引が後に露呈
      作為的な相場形成をし、約12億円の収益を得たことが発覚
      9月20日、日本証券業協会から“1億円の過怠金”と
      “日証協会員権の6ヶ月停止処分”さらに没収できな
      い不当利得の返還の要求をしている。
・監査法人の意見不表明 
-----------------------------------------------------------

*新興デベロッパーは、米国サブプライムローンに端を発するが、融資機関からの資金調達が不可となり債務超過へと悪循環、逆スパイラルとなる。これらの新興デベロッパーの倒産の影響が、多額の不良債権となり不動産市況の悪化、建設業界不振へと波及していくのであった。


躍進していた企業が、つまらぬ不祥事や、金融の不正取引にまきこまれたり、リスクは身近に存在する。かつてない市場環境の中でリスクマネジメントは益々重要なことであると痛切に感じた講演であった。

(日本リスクマネジメント会員 リスクマネジメントプランナー仲田昌弘)
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2009年10月19日

リスクマネジメント協会秋季大会2009報告

10月17日(土)、日本教育会館(東京)に於いて、リスクマネジメント協会秋季大会が開催された。
基調講演“消費者保護重視の監督官庁誕生”「消費者庁の業務と企業の新たなリスク」についてご紹介しよう。
講師は、ACE Consulting Inc. Executive Advisor 白井邦芳氏。


 ・衆議院選挙以前の消費者行政の状況と課題
 ・自民党「消費者庁構想」と民主党「消費者権利院構想」の違い
 ・マニフェスト比較
 ・民主党のマニフェストにおける消費者政策
 ・現消費者庁及び消費者委員会組織図
 ・現消費者行政のイメージ
 ・消費者庁関連3法の関係
 ・消費者庁が所管する関係法規
 ・参議院「消費者問題に関する特別委員会」附帯決議(2009年5月28日)
 ・消費者庁の今後
 ・何が変わる!? 例えば・・・
 ・顧客サービス質の業務の質の重要性


以上の内容で講演は進められた。
政権交代による影響は大きいとのことから、その違いを解りやすく解説。


9月1日に「消費者庁」が誕生した。しかし、政権交代により自民党の「日本を守る責任力」に対し、民主党の「国民の生活が第一」のマニフェストスローガンが、国民重視への政策転換であることから、消費者政策は企業にとってさらに厳しい環境になると予想される。

今までは、(1)消費者が被害を被った場合に司法が権利回復のための手段として十分に機能していない、(2)行政は消費者に代わって事業者の違法行為を是正したり、消費者の被害を救済する等の役割を果たしていない、のが消費者政策の現状であった。これらの課題を改善し、「消費者の権利を守り、安全を確保する」企業擁護から消費者保護の時代へ突入である。
民主党案は、内閣から独立した「消費者権利院」を設置し各省庁に対して強制調査や処分などの権限行使を勧告できる組織。
予算規模は約1,000億円、最大で一万人の組織を作り上げる。
ちなみに、自民党案では職員を200余名、設置関連費用182億円の概算要求であった。民主党の力の入れ具合が想像できよう。


「附帯決議」:抜粋

 ・消費者委員会は、個別具体的な事案に対して関係行政機関の長へ報告徴求、資料提出要求を行い、必要に応じて消費者や事業者等から直接、情報を得たり、資料提供を受け、その結果として「勧告」を行うことが可能である。
 ・消費者庁は、消費者事故等について、タスクフォースを活用することで、独自の調査を行うことがある。特に、事故原因の究明や再発防止策の迅速化が求められる事案については消費者庁がリーダーシップをもって関係省庁、特定行政庁、警察、消防に対して協力を要請し、自体の把握、沈静化を目的として積極的に活動する。
 ・消費者庁は、商品欠陥クレームに迅速に対応するために、商品検査機能を有する各機関の機能強化を図るとともに、必要があれば市場からの排除勧告を促し、また、加害者の財産から不当な収益を剥奪し、被害者を救済するための措置を行う。また、父権訴訟や団体訴訟制度、課徴金制度等を検討、運用に向けた具体的施策を決定する。
 ※父権訴訟=行政が違法行為の差し止めを行い、消費者に代わって民事裁判を起こして賠償金を取り立てること。


これらの「附帯決議」の実行(法制化)が重要課題。この動向は企業にとって極めて重大となる。
消費者に影響を与える企業内情報の取る扱いが厳しくなると同時に、一方で顧客、取引先ばかりでなく、あらゆるステークホルダーからの情報が消費者庁に集められることにより、サプライズ的なバッシングや風評、信用毀損が発生するリスクが大きくなる。



何が変わる?
例えば・・・、

 コンプライアンス問題は、深刻な重大課題
  ・内部告発による偽装の発覚
  ・消費者庁の関与、立入検査
  ・消費者庁による排除勧告、消費者庁HPでの開示
  ・該当省庁からの改善命令
  ・該当省庁への改善報告書提出
  ・消費者庁から不当利益剥奪のための課徴金命令
  ・上場企業であれば株主代表訴訟提起
  ・株主総会は危機管理レベルに!

 PL事故リコール対応は、事業者の大幅コスト負担 (危害クレーム)
  ・国民生活センターによる苦情多発
  ・経済産業省からの問い合わせ・報告、消費者庁関与
  ・独立行政法人製品評価技術基盤機構からの問い合わせ・報告
  ・経済産業省によるリコール命令、新聞・TVでの告知
  ・消費者庁HPでの開示NITEでの開示
  ・消費者庁からの企業に対する事情聴取
  ・消費者庁より原因究明の専門官の派遣、調査結果を消費者庁HPで開示
  ・父権訴訟または団体訴訟制度により被害者救済

また、クレーマーがモンスター化したり、一般消費者がクレーマー化する懸念がある。すでにその兆候は顕在化してきている。
従って、消費者(顧客サービス)対策も企業にとっては重要なこととなる。


消費者保護政策は、企業にとって新たなリスクである。これまで以上のコンプライアンスの徹底、リスク管理が要求される時代となった。グローバル化の影響は、地場産業の中小、零細企業まで浸透しつつある。王道を逃避し、的確な対応を怠ると痛い目に遭うことになろう。

(日本リスクマネジメント会員 リスクマネジメントプランナー仲田昌弘)
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2009年06月15日

加速する消費者重視の動き

政局の混乱もあってのびのびになっていた消費者庁の設置が決まった。これまでの経済産業省、農林水産省、厚生労働省、金融庁、公正取引委員会等の各省庁がばらばらに所管していた消費者行政を一元的に担う組織のスタートは、旧来の産業保護・育成を主眼とする行政から、消費者保護重視への転換を意味する。同時に司法の場でも消費者保護の動きが強くなり{お客様第一主義}を謳いながら消費者の権利を軽んじてきた一部の企業はいま、重大なリスクに直面することになる。


日本の消費者政策はいま、大きな転換を迎えている。1962年、アメリカのケネディ大統領が「消費者の利益の保護に関する特別教書」を議会に提出し、消費者の4つの権利――安全である権利、知らされる権利、選択する権利、意見を述べる権利を提唱したのを機にアメリカ国内、世界の消費者保護が一気に進むことになった。

46年後の2007年1月、当時の福田康夫首相の「生活者・消費者が主役となる社会」の実現を掲げ、消費者庁発足の足がかりとなった。我が国の保護施策は、

1):60年代の高度成長の弊害としての環境破壊と消費者被害の発生、行政規制で事業者を規制して消費者を規制して消費者を守るハードロー(法令)
2):90年代には、製造物責任法、消費者契約法などが制定され、裁判・司法によって消費者が権利を行使
3):近年は、企業の社会的責任やコンプライアンス経営、自主行動基準といった、ソフトロー(法令以外に規範)に沿って消費者政策を推進

と推移してきた。

ときとして、事業者にとっては合法で、問題はないと判断したビジネスモデルであっても、現実に消費者の権利を大幅に損なうものは社会では許容されず、やがて法的にも認められなくなるという当然の理(ことわり)もある。企業が自主的に消費者の視点に立った経営を行うことで競合に差をつけ、市場における優位性を獲得して行くのが本来のあるべき姿であろう。


消費者指向経営とは、経済産業省がかって実施していた消費者志向優良企業等表彰制度では次の様な選考基準がある。

★ 経営方針として消費者志向重視の姿勢があらわれている
★ 消費者ニーズの把握が十部に行われている
★ 消費者啓発活動、商品等に関する消費者への情報提供が適切に行われている
★ 商品等の品質管理体制、品質保証体制が整っている
★ 地球温暖化の防止、リサイクルの推進等の環境対策に積極的に取り組むことにより、環境保全に対する消費者ニーズに的確に対応している
★ 消費者対応体制が整備され、かつ有効に機能している

当たり前のことばかりではあるが、高いレベルで実践しなくてはならないのは容易なことではない。安心・安全・信頼といった、時に空疎にも響きかねない言葉に安易に頼らない、しっかりした種、仕掛けのある経営のあり方を作らねばならない。


近年世間を騒がせた食品偽装や製品・性能偽装のほとんどが従業員の内部告発によって発覚している。監視体制が多様化し、中でも従業員は公益通報者保護制度によって強力な監視主体となっている。

消費者にさまざまな権利を与えることでモニタリングを促進し、事業者の行為を止める権限を民間に付与し、行政規制の民営化を図るものでもある。

こうした社会情勢を背景に、市場を利用した消費者政策の特徴のひとつに「消費者の不信を取り除けば需要は拡大する」。これまでは、事業者と消費者が、加害者対被害者という対立構図であった。しかし、不誠実で悪質な事業者が市場から退場すれば、誠実な事業と消費者の双方が得をする。ゼロサムの世界から、ウィン・ウィンの世界へのシフトである。

リフォーム詐欺が横行した際には、地域に密着した中小零細の工務店が大打撃を受けた。姉歯事件では、消費者の被害ももとより業界の損失も大きかった。昨年の溶融スラグ混入コンクリート事件も大きな影響を残している。

2009年3月のJIS A 5308「レディーミクストコンクリート」の改正は、まさに消費者行政の一貫であろう。環境施策、情報開示・提供、が主体となった改正内容となっている。


消費者と企業の両方が得をするウィン・ウィンの関係を成立させるためにサプライサイドである企業が、消費者利益を重視した自主的な取り組みを行う必要があり、自主行動基準を定めてそれを遵守することが大切なことである。その基準の内容と遵守状況について消費者などによる第三者評価を受け、一方のデマンドサイドである消費者もそれを評価して購買行動に結びつけることで、良い企業、まじめな事業者を支援することになる。


法令遵守は最低限のライン、法令の精神を理解し、直接の適用範囲外の商品やサービス、取引形態にも対象を広げて取り組む「横出し」や、法令で定める以上の対応をする「上乗せ」を行えば、消費者の信頼を獲得し、競合との差別化や競争優位につなげていくことも可能である。


3月に「安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」が発足している。政府だけでは解決できない社会的課題に対して、事業者団体、消費者団体、労働組合、金融界、NPO、専門家、政府の7つのステークホルダーが協働し、相互にコミットすることによって解決にあたる新しい枠組である。

消費者と企業の関係が転換点を向かえたいま、コンプライアンス経営の意義を改めて理解し、仕組みを構築していくことが企業の生き残りをかけ重要なことである。


※リスクマネジメント「TODAY.Vol54」、特集“消費者志向経営が会社を強くする”より概要を記載しました。

(日本リスクマネジメント協会正会員 仲田昌弘)
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2009年03月16日

リスクマネージメント協会・年次大会2009 報告

2009年3月14日 リスクマネージメント協会・年次大会が、東京 日本教育会館で開催されました。CSRのホットニュースを掲載します。


基調講演は、Joseph Restoule 氏(RIMS President 2009)を迎え、“Fast Forward Risk Management”(リスクマネジメント“前進・加速”)と題し、ERM(Enter Risk Management)の導入の重要性を示唆した内容でした。

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ERMは、COSOU(Integrated Framework)として2004年9月に発表されました。2008年内部統制報告制度による単なる法制度対応だけでなく「After SOX」と位置づけ「戦略」をその目的として全社的に統制しているところが新しい観点です。
これまでのリスクマネジメントはブレーキとしての役割が強かった(マイナス面)。リスクをコントロールすると言うことはブレーキを踏むだけではなく、チャンスに対しアクセルを踏むことができるのである(プラス面)。このプラス面をコントロールするという考え方に基づき、「戦略」としてリスクマネジメントサイクルの構成要素に加えられたことがERMの基本です。
COSOTのフレームワークは3つの目的と5つの要素から成っていますが、財務報告中心の考え方が強く、経営実務に活かしにくい面がありました。

そこで、内部統制の目的に
  ・戦略 (組織のミッションに関連づけられた高次元の目的)
  ・業務 (組織の経営資源の有効かつ効率的使用に係る目的)
  ・報告 (組織内外の報告の信頼性に係る目的)
  ・コンプライアンス (組織機に適用される法令規則の遵守に係る目的)
構成要素として
  ・内部環境
  ・目的の設定
  ・事象の種別
  ・リスクの評価
  ・リスクの対応
  ・統制活動
  ・情報と伝達
  ・モニタリング
印の内容が追加された目的及び要素です。

具体的なERM導入企業に見られる5つの要素は、
1.企業理念、経営理念、行動憲章、社是、社訓などが明確
2.社会の要求や他社の不祥事などに敏感な組織体制を構築
   内部監査、コンプライアンス、CSR、経営戦略、リスクマネジメントに関する部署が存在、リスクの評価の手法・技法が決定
3.社会からの要求、事業環境変化に応じて組織構造を柔軟に変えられる
   トップコミットメントがあり、改革に積極的な経営姿勢があり、事業環境の変化に応じて柔軟な組織作りができる
4.リスクへの対応が事業計画と連動している
   事業計画、新規事業などに対するPDCAが回っている。また、全社のリスク構造を解明し、事業目標達成や企業価値向上を図ることに積極的である。(内部統制報告制度に対応)
5.コミュニケーション(風通し)が良い
   コミュニケーションが密で、全社最適がとりやすい。話しやすい環境でボトムアップによる改善・改革が旺盛である。
が挙げられます。


現在の金融危機はほぼ18ケヵ月前に顕在化し始めて、'08年の第四四半期のウオール街の崩壊で頂点を極め、世界中のビジネスに大きく影響しています。このような大規模な金融危機を生み出した原因はリスクマネジメントの失敗にあると説明するのは簡単であります。しかし、よく分析をしていくと多くの破綻した企業で適切なERMに基づく活動がなされていなかったとRIMSでは考察しています。ERMに基づく活動は総合的かつ体系的に応用されればこれらの企業の直面した多くの損失について完全に防ぐことはできなかったにせよ、低減が可能であったはずとジョセフ・リストウール氏は述べています。
今回の経済危機はERM再考の為の機会なのか・・・、経済危機が二度と起こらないために、組織はリスクについての考え方を改め検討すべきであるとも示唆していました。

より踏み込んだ分析結果は、RIMSのERM開発委員会の作成した「2008年の金融危機、ERM導入の必要性」という報告書に記載されています。この報告書は、RIMSのホームページで閲覧することができます。

ERMは総合的かつ体系的に設計され運用された場合、企業の将来を変えることが可能です。企業文化の一部になることで、市場の悪化の兆候は簡単には見過ごせなくなります。すべての社員が全体的なリスクマネジメントのプロセスに参加していれば、リスクに直面した場合でも企業は遙かに早く立ち直ることができます。すでに次の景気サイクルが回り始めています。企業の倒産、リスクマネジメントや企業ガバナンスの機能不全が起こる前に学んでおく必要があるとコメントしています。


最後に、あなたのリスクマネジャーとしての役割は?

知識の基盤を拡充させ、自分自身のスキルを確認し、組織がERMを戦略的に使えるようにするにはなにができるかを考えて下さいと・・・大きな宿題を提示され終わりました。

JIS A 5308 “レディーミクストコンクリート”の改正が3月20日告示であります。
今回の目玉“透明化”というキーワードがどう展開して行くかが気がかりです。品質、規格、現場、を加味した整合性(すりあわせ)が必要ではないか?総合的な視野からポジティブな考察がという気がします。
(リスクマネジメント協会(日本RIMS支部)正会員 仲田昌弘)
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2009年02月02日

CSR経営が夢を実現 -愛知金物建材株式会社の事例-

昨年末についに新生コンプラント完成!

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昭和36年から東京都町田市において創業した愛知金物建材(株)社。
創業当時は多摩丘陵の自然に囲まれた環境でしたが、気がつくとここ数年で周囲は戸建て住宅地に変貌。騒音・粉塵・車輌の運行など、近隣対策を検討せざるを得ない状況に・・・。

近隣住宅への環境改善対策から生コンプラントのリニューアルを計画。現環境の中でどのように事業を継続可能に進めて行くか大きな命題を抱えてスタートしました。
設計事務所の担当者、K&Kプラントの担当者の方々と役所へ通うこと3年、愛知金物建材(株)社の熱意に役所の担当の方の賛同を得ながら様々な角度からご指導を受け、ようやくリニューアルを実現しました。
その背景には杉浦社長のCSR経営の思想が効を奏したものと思われます。

プラントをリニューアルするに当たり、CSR経営「社会的経営責任」の実践を提唱し、単に近隣への環境改善だけを目的にするのではなく、事業が持続的に成長していくことを目標にして、各ステークホルダーの期待や関心を的確に把握してそれに応えていくことを使命と認識しています。

それは、愛知金物建材(株)代表取締役 杉浦隆社長の宣言文

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私達は、互いに同志であり
その家族を尊敬しあい
一致団結 協力し
期待され 期待に応え
社会の多くの幸せに繋がる
お客様の感動を創り出すため
常にチャレンジすることを
誓います

を企業理念とし、その中に表現されています。
“素晴らしいモノは変わらない”を原点に商材の質・量、関わるスタッフの人間的魅力を以て、商品・サービスを「感動」というメッセージとともにお届けしたいという願いを杉浦社長は熱く語っています。


こうした経営方針の基、役所の認可を得て完成した生コンプラントは、

■K&Kプラント(株)社が誇る最新鋭ミキサ(ジクロスミキサ 1.3m3)を搭載し、78m3/hrの小型生コン工場では大きな生産能力を発揮します。
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ジクロスミキサ

■垂直ベルコン(バケット式)は敷地を有効利用しコンパクト化に成功。さらに、騒音の低減、粉塵飛散の防止等、近隣住宅への環境に配慮をしました。
■音の発生源は、低騒音機種の選定や屋内設置(防音対策)を図り、敷地境界には防音壁をも配しました。
■工場外への排水はゼロ、クローズドシステム化を実施。

等々・・・、環境に優しいをコンセプトに設計され、近隣在住の方々との共生を図っています。

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そして、現在CSR活動としての杉浦社長の各ステークホルダーへのミッションは、
■社員■
「行動規範」の提唱、「倫理観」の共有等、コンプライアンスを基本とした社員教育
ライフワークバランスの支援
■ユーザー■
“素晴らしいモノ”を「感動」のメッセージとともにお届けする
■環境■
近隣住宅への共生と融和(騒音・粉塵対策等)
地球環境への配慮(チームマイナス6℃に賛同企業として登録し、活動中)
■地域・社会貢献■
町田セルビア(地元サッカーチーム支援)/今期JFLに昇格
地元建設・土木業社とともに、地場産業への共生
教育施設、公園施設への資材提供
■仕入れ先■
建設・土木資材、金物等の展示チャリティー即売会等、イベントを共同開催(近隣地域住人への提供も)

      
今年の4月にJIS-A-5308「レディーミクストコンクリート」の規格が改正されます。昨年発覚した神奈川県内の生コンクリート会社が起こした不祥事から、厳しい内容の要請が生産者側に明記されています。

市況の低迷、材料費の高騰等、アゲインストの風ばかりではありますが、業界の信頼回復のためにも正面から対処して前向きに進みたいと、杉浦社長は、新プラントの完成と新年をスタートするに当たり熱く熱く語ってくれました。

文責:新東産業(株)・仲田昌弘(日本リスクマネージメント正会員)
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2008年11月10日

ヘルシーカンパニーへの挑戦 “メタボリック社員を減らせ!”

リスクマネジメント協会会員誌「TODAY」に興味深い特集がありましたので、内容を要約してご紹介したいと思います。


 2008年4月からメタボリックシンドロームに着目した特定診断と特定保険指導がいよいよスタートした。いわゆる“メタボ健診”である。
対象となるのは40歳から74歳迄の被保険者及び被扶養者。健康保険組合等の保険者ごとに、健診受診率や保険指導率、メタボ改善率の目標が設定され、2013年度からはこの達成度によって保険者が後期高齢者医療制度に対して拠出する支援金が10%の範囲で増減される。
支援金の負担減というインセンティブを与えることで生活習慣病対策を推し進め、医療費を削減するという国の政策である。
 メタボ健診の医療費は一人当たり7,000円から8,000円程度と厳しい財政運営が続く保険組合にとって義務化は新たな負担となって重くのしかかっている。さらに後期高齢者医療制度に対する支援金の拠出が始まり赤字に陥る健保組合が増え、2008年度の全体赤字額は6000億円にも達するといわれている。


 こうした状況、将来の財政負担を軽くしようと企業ぐるみで“メタボ対策”に取り組む例が増えている。「ヘルシーカンパニーへの挑戦」である。
 トヨタ自動車では健診の対象年齢を36歳から、メタボ予備群の早期発見を図る。さらに健保と共同で健康支援センターを開設し、4年に1回のタイミングで最新の医療機器を使って各種疾患の早期発見を狙ったハイレベルな健康診断と指導を行う。


 業種によっては、メタボ社員が企業イメージを損なう恐れも否定できない。ライト&ヘルシーを謳う食品メーカーや飲食店の従業員が太っていては、説得力に欠けるとというものであろう。
 また、教育投資を続け、経験豊富、職場をリードする働き盛り世代の病気による戦線離脱は企業にとっては大きな痛手となる。


 社員の心身の健康管理を経営課題に加え、積極的に取り組む姿勢、その根幹にあるのは健康な社員が収益性の高い企業をつくるという考え方である。
日本ではこれまで、企業の健康増進のための取り組みを評価する仕組みはなく、健康関連投資の効果の検証もほとんど行われてこなかったが、経済産業省と厚生労働省は現在共同で、企業の健康増進活動や費用・効果を可視化する「健康会計」の導入に向けた準備を進めている。
 従業員の健康作りに熱心な企業であるというイメージは、人材確保においても有利に働く。メタボ社員の存在そのものが経営リスクなのではなく、社員の健康に関心の低い企業体質にこそ問題がある。人を使い捨てにする企業への社会の目が厳しさを増す中、CSRの一環として、社員の健康を考えるヘルシーカンパニーのあり方が注目される。(リスクマネジメントプランナー:仲田 昌弘)
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2008年09月08日

中小企業におけるリスクマネジメントのポイント2

前回、中小企業におけるリスクマネジメントのポイントについて、船井総合研究所が提唱している日本版危機管理経営実践のための仕組み“2つのサイクル循環”をご紹介しました。
今回は、その仕組みの中の一方「リスクコミュニケーションサイクル」における7つのステップの概要を抜粋して記載します。危機管理経営に必要な2つのサイクルの循環図を参照して下さい。


1. 経営トップの決意・宣言
経営トップが社員に対して自らの言葉で危機管理経営の実行を宣言する機会をつくる。これは、「リスクマネジメントサイクル」においても同様なステップで重要な所信表明の場である。
会社の利益貢献につながらないように映る危機管理経営の意識を経営トップが常に直接社員に語りかける場を持つことが大切である。

2. 情報の見える化
可能な限り、社内の情報は共有する。透明性の高い情報の共有は、暗黙の不正防止と知の共有につながる。組織内の情報の断絶や流れの遮断をなくすことが大切なことであり、業務効率の向上や顧客満足の向上につながる重要なステップでもある。

3. 部門間交流の実施
他部署のことは我関せず、といった企業風土は企業不祥事が起こりやすい企業の特徴の一つである。セクショナリズムの強い企業は独特、暗黙のルールが部署内で生まれ、時として会社のルールを逸脱する行動をとる。これが大きな損害を起こす可能性を持つ。
部署間のコミュニケーション不足は多くの企業が抱える悩みであり一筋縄で解決するものではないが、この各部署の長同士のコミュニケーションがとれている組織が極めて重要なポイントになる。

4. フラットな社員関係づくり
上下の役職の違いに関係なく、正しいことは自由に発現、進言できる関係が組織内に構築されていること。組織図上の構造ではなく社員関係のコミュニケーション造りに注力し、「進言できない、隠す、嘘をつく」の上下関係をつくらないことが有事の被害を最小限に食い止めることになる。

5. チームワークの醸成
個人の行動が見えない業務体制の企業、すなわち個人プレー重視の組織体は、不正な行動やコンプライアンス違反などの危険度が増すと言われる。行き過ぎた成果主義の弊害が、社員のミスコミュニケーションや離職率の上昇等を招く傾向が一時期見られた。個の力の向上とチームワークづくりのバランスをとりながら組織力アップを目指すことが重要である。

6. 危機管理意識に対する評価・表彰制度
   大手企業においては、CSR委員会など各部署のリスクアセスメントやそれに基づくリスク低減対策活動を評価・表彰する動きが見られる。この活動の延長線上に社会貢献活動の動きなどがある。
   売上・利益に直結しないマイナスにとらえがちな危機意識の醸成とそれに基づく活動を評価することが危機管理レベルの全体の引き上げにつながる。

7. 未然防止体制の確立
   上述した取り組みを実践することにより、業務効率の向上、社内コミュニケーション力向上によるシナジーの創出、危機管理の取り組みを広報活動や社会貢献活動として位置づけることによる企業ブランディングの構築等…、危機管理経営における未然防止体制の確立とともにこうした相乗効果が期待できる。


以上、日本版危機管理経営に向けて、「リスクマネジメントサイクル」と合わせて導入・実践されてはいかがでしょう。(リスクマネジメントプランナー:仲田 昌弘)
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2008年08月25日

中小企業におけるリスクマネジメントのポイント

 相次ぐ企業の不祥事により社会の企業に対する見る目は益々厳しく、欧米企業が敷いてきた管理手法を日本でも否応なく導入せざるをえない状況に陥っている。さらに、2008年4月1日以降開始される事業年度から、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(日本版SOX法)がスタートし、日経225銘柄に選定される大企業から最近上場したばかりという中小規模のベンチャー企業まで、一律にこの制度が適用されることになった。

 ところが、1.実際に仕組みを導入しようと思っても、何をどのようにすれば良いのか解らない。2.企業努力(実際、一部の社員のみによる努力であるケースが多い)で仕組みを構築しても、実際の運用は形骸化し機能していない。というのが多くの日本企業の実態のようである。

 それは、形だけを真似して導入したが為、日本の企業風土に合った「危機管理」「法令遵守」「企業統治」に順応せず仕組みだけが一人歩きになってしまう実情が問題であると(株)船井総合研究所(経営コンサルタント会社)提唱している。“真の”危機管理経営を実践するためのポイントを提言しているのでここにご紹介したい。下記に示す2つのサイクルを循環させることが必要不可欠である。

 「リスクマネジメントサイクル」
   危機管理経営に必要な仕組みやルールづくり
(リスクの洗い出し・リスクマップの作成・マニュアルや行動指針ハンドブックの整備等)
 「リスクコミュニケーションサイクル」
   危機管理経営に必要なコミュニケーションや企業風土づくり
(社内のコミュニケーションや企業風土の視点から経営を見つめ直す)

図:危機管理経営に必要な2つのサイクルの循環((株)船井総合研究所社からの抜粋)
※下図はクリックすると拡大表示します。
20080825-01.jpg



 自分と隣の人間の常識にズレが生じる環境において「標準・スタンダード」の設定は必要で、規格に基づいてマネジメントシステムは有意義な仕組みである。ところが日本企業に備わっていたお互いを慮る気持ちや労りの気持ち、阿吽の呼吸は、当たり前のことを当たり前の決め事として「標準化」されており、危機管理経営には適している。その良い部分を見つめ直し、消費者からの安全、安心、信頼を得られる危機管理経営を実践していただきたい。
 次回(9月)にリスクコミュニケーションサイクル実践のポイントについてあらためてご紹介します。
 
長野県生コンクリート工業組合が生コン施工現場の問題解決を目指して県内の工事関係者を対象に実施したアンケート調査で、生コンへの加水や試験結果の改ざん等の実態が浮かび上がった。同組合・品質管理監査会議(議長:長尚・元信州大学教授)が中心になって実施し、対象は県内の建設会社、生コン関連会社、専門工事会社、建築設計事務所の各社員と工事発注担当社(公務員他)など、823人の回答による。
外部からの告発ではなく関係者自身の恥部を明らかにして真剣に問題の解決を図ろうとする例は、様々な欠点・欠陥・不祥事に対応する前向きな姿勢であるといえる。巷で頻発している不祥事(内部告発)は対岸の火事ではもはや無くなりつつある。(リスクマネジメントプランナー:仲田 昌弘)
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2008年08月18日

リスクコミュニケーション

 先日神奈川県の生コン製造業者が「溶融スラグ」(焼却灰を加熱・冷却したスラグ)を一部混入した生コンクリートを製造・出荷し、マンションなどの建設に使用されたことが発覚した。県や国交省は、規格外の不適切な使用で建築基準法に違反するとみて調査している。

 建設業界では、姉歯偽装に続き大きな衝撃を受けている。構造物の補償の問題、業界監査やJIS認証のあり方、コンプライアンスに対する自己責任等々…、多くの課題が新たに浮上した。

 リスクマネージメントにおいて、企業の事故や不祥事が発生すると、記者会見、お詫びの社告、ホームページでの謝罪文の掲示、等が一般的な企業の対応である。企業経営においてリスクが発生した際に、ステークホルダー(顧客・消費者、取引先、株主、従業員)に対する説明責任があり、それをどのように行うかが非常に重要なことである。

 この説明責任を「リスクコミュニケーション」と呼び、企業が最終消費者や地域住民、地域行政に様々なリスクに対する情報を開示し、リスクを共有するための大切な広報活動である。

 しかし、この広報活動は事故や不祥事が発生してから行うことではなく、“リスクを予測し、そのリスクをどう管理するかの情報を開示・共有するかを示すこと”が「リスクコミュニケーション」の基本である。

 化学物質に関するリスクを中心に展開されてきた背景には、米国・化学会社の有害化学物質を発端とした公害問題がある。“ラブカナル事件”として知られており、この事件を契機に「包括的環境対処保証責任法」が成立し環境リスクに対する社会的関心が高まった。

 化学物質等を扱う企業は環境リスクについて、例えば食品関連会社等は残留農薬などの食品に関するリスク等を情報開示・説明している。化学物質の有害性と暴露量によって決まる環境リスクは、どのような有害物質が含まれていて、その量(暴露量/排出量や残留量)を踏まえてどう管理していくかを開示・共有することが必要である。一般には、PRTR法のもとに化学物質の有害性と暴露量について情報が開示されている。

 安全と安心を要求される現代、リスクコミュニケーションを促進する上で、第一は信頼関係を構築することが重要であると指摘されている。特に、事業者の身元及び事業内容に関する透明性の確保である。環境保護対策の再資源化・再生資材の利用においては尚一層の注意と配慮を払う必要があろう。

 今年度、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」の改正が実施される。資源の再利用等が盛り込まれるとともに、納入する生コンクリートの配合の開示(表示)が義務付けられる。益々もって企業の透明性が要求されることとなる。適正販売価格の確保を見据え事業者の信頼の確保をする努力を惜しまない意識改革が必要とされている。(リスクマネジメントプランナー:仲田 昌弘)
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