2011年02月10日

第6回 コンクリート材料 - 構造の最先端技術に関する研究会 報告 in 横浜国立大学

「発注者の役割・技術力」のセミナー報告


標記のセミナーは、昨年2010年12月21日、13:30〜17:30に開催された。
このセミナーは、横浜国立大学・コンクリート研究室、細田暁准教授が毎年“Initiative for Global Arts & Sciences グローバルな学術の共創”を標榜し、この業界に関わる学識者・研究者・学生及び社会人の英知と元気を共有して発展していこうという主旨のセミナーである。
今年のテーマは、「発注者の役割・技術力」で次の5題であった。(※ご講演者の敬称は略させて頂きます。ご容赦下さい。)

1.山口県のひび割れ抑制対策 ―発注者の技術力とひび割れ(山口県砂防課 二宮 純)
2.山口県のデータベースから考えるコンクリート構造物のひび割れ抑制対策(徳山工業専門学校 教授 田村 隆弘)
3.ひび割れ抑制対策と表層品質の向上(横浜国立大学 准教授 細田 暁)
4.地下鉄トンネルの維持管理の取り組み(東京地下鉄株式会社 公務部 山本 努)
5.青森県における橋梁アセットマネジメントの取り組み(青森県道路課 川村 宏行)


★1〜3題のひび割れ抑制対策は、山口県で実施されているひび割れ抑制対策についてまとめられた発表で、発注者の技術力とひび割れの関係を示唆し、ひび割れ抑制の目的を(1)耐久性・維持管理面、(2)構造物の信頼性、(3)工事の工程・コストに注目して試験施工をスタート。
そして、これらの内容をデータベース化し、公表・共有化することでひび割れの内容、状況等を判断し、適切な対応を前向きにしていくことでひび割れの少ない健全な構造物の建設が行われるに至った経緯・経過及び現状とこれからの課題について内容の濃いご講演であった。
(1)発注者・請負者の継続的な努力“コンクリート工事に携わった人々の意識改革”が大切
(2)ひび割れを発生させない技術はあるなかで“最も経済的な対策を見出す手法”を実用的な手法
(3)「良いものを未来に残す」建設技術者として価値ある仕事をした証(プライド)を残す。最近の山口県には良い構造物がたくさん出来ている。
・・・等とまとめ、その調査・検証報告が細田先生からなされた。


★地下鉄トンネルの維持管理の取り組みについては、東京メトロの土木構造物と維持管理体制についてのご講演であった。
供用後50年を経過する構造物の総延長キロは、約200kmに及びさらに10年後には50%が50歳を超える構造物となる。日本最古の銀座線トンネル診断への挑戦から始まり、あらゆるデータを採取、「維持管理編」に準拠して診断。耐荷性は3D解析評価(上床の疲労まで照査)を実施。
75年経ったトンネルでも、十分な補修でまだまだ元気!
工学的根拠のある客観的な判断
・社内・社外に高い説明責任を果たす
・明確な長期的投資判断が可能
等、確認ができたこと。
そして、維持管理情報の可視化・デジタル化を目指す。 
我々のミッションは、
・高度な工学的根拠を追求し、判断したい
・土木技術者だけでなく、事務部門、経営者、顧客、社会、株主…それぞれに納得して貰える説明責任を果たしたい
・後世にも認めてもらえるような長期的な視点でリスク明確化、予測・対策をしたい
・メトロトンネルオリジナルの知見を見出し、世界に発信することで貢献したい
・創造的、独創的に楽しく仕事をしたい
とのことだった。


★青森県における橋梁アセットマネジメントの取り組みは、
・橋梁アセットマネジメントの導入
・BMSを用いた橋梁長寿命化修繕計画の概要
・橋梁アセットマネジメントの実践
・産学官協同研究
の4点についてご講演があった。
青森県が管理する橋梁数(平成20年4月現在)は、橋長15m以上(779橋)、15m未満(1457橋)、横断歩道(25橋)の計2261橋である。今後老朽化が急速に増大。長寿命化及び修繕・架け替えに係わる費用の縮減を図ることが重要になってきた。(長寿命化修繕計画策定事業補助制度の創設)
アクションプラン(5箇年計画)により、平成20年のレポート及び22年までの速報があった。
 計画154億円に対し実績170億円(110%)の予定
 計画329橋に対し実績282橋(86%)の予定
とのことである。
今後、アセットマネジメントの実践は永続的な実施が求められる。
・データ蓄積による精度向上
・技術力向上のための研修会等の継続的実施(産学官協同研究他)
・可能なのはアウトソーシングにより実施(施工工法や計画予算)
・地域によるマネジメント
等の課題がある。


以上、熱い講演が最後まで続いた。
内容の詳細は、継続的に掲載を予定しています。お楽しみに…。

新東産業株式会社 東京コンクリート診断士会正会員 仲田昌弘


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2010年12月20日

東京コンクリート診断士会第5回技術見学会報告 Vol.4

地球温暖化の緩和策、再生可能エネルギーとして注目を浴びている風力発電。新潟県柏崎において、協同組合ニューエネルギーリサーチにより風力発電の実証実験を実施している“ぶんぶんカゼラ”を見学した。
海岸線の国道8号線から坂を登って「道の駅・風の丘米山」に到着。穏やかだった天気も雲が多くなり北風の強い状況に変わっていた。
タワーの高さ:35m、3枚の羽根の直径は42m、羽根が一番高いところでは56mの高さになるという。
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風力発電“ぶんぶんカゼラ”の概要


風力発電機は、風力4mから発電をすることが可能で、25m以上の強風が10分間以上継続すると停止する仕組みになっており、強風時の安全対策もなされている。尚風力4m以下の微風時でも風車は回るが発電はできないと。
風車のメーカーは、Vestas社(デンマーク)であり、世界各国で実績のあるもの。
定格出力は480kW、年間の推定発電量は70万kW(一般家庭の200軒分に相当)になる。
見学時は風が強く、風車の回る音(風を切る)がよく聞こえました。まさに“ぶんぶんカゼラ”でした。
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間近で見るとかなりの迫力です。(脚は綱製)
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1日目の見学場所“道の駅・てらす名立”の風車(Vestas社製)
(脚はコンクリート製)



NEDOの新エネルギー草の根支援事業補助金及び柏崎市補助金による支援を受けて稼働しているが、発電効率は悪く事業としては困難が多い。
風力発電の発電効率は約20%といわれているが、実情発電稼働日が述べ約50日程度。(水力発電が95%、太陽光発電は12%と言われる。)
また、最大の敵が雷。写真では見ることができないが、羽根のあちこちに黒い斑点があり、落雷の跡がある。故障と劣化の原因である。過去に落雷が原因でオーバーホールを行ったとのこと。そして、そのメンテナンス費用が多額にかかる。

・・・等、地球温暖化対策の石化燃料の代替エネルギーの道は険しい。
地球環境の保全、エネルギーセキュリティーの確保、実現可能なエネルギー源の探索は必要不可欠なこと。しかし、その実現の道は遠いか…と実感した。
4回にわたりご報告した「東京コンクリート診断士会第5回技術見学会報告」は今回で終わりです。

東京コンクリート診断士会正会員 仲田昌弘
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2010年12月13日

東京コンクリート診断士会第5回技術見学会報告 Vol.3

11月2日(火)2日目の見学場所は、東京電力柏崎刈羽原子力発電所と風の丘・風力発電“ぶんぶんカゼラ”である。


昨夜の楽しかった懇親会の余韻を残しつつ、美味しい新潟米の朝ご飯をいただき、朝7時30分には宿泊地「くわどり湯ったり村」を出発。天気は昨日の荒れ模様とはうってかわってさわやかな快晴。

定刻よりやや遅れて柏崎刈羽原子力発電所サービスホールに到着。
場内見学に当たって、身分証明書を提示、確認を要する厳格な警備である。原子力発電所内には、バスからの見学に限定され、検問所ではやはり厳重なチェックを受ける。
場内には、各協力企業からの社員等7,000人余りの方々が従事している。やはり出入りは厳しいとのこと。
また、場内は生物多様性実験を兼ねた(放射線予防・影響)を検証する様々な実証実験がなされている。


柏崎刈羽原子力発電所
  世界最大の原子力発電所
  柏崎市と刈羽市にまたがる約420万m2(東京ドーム約90個分)の
  敷地に7基の原子炉。
  合計出力は821.2万kw、世界最大の原子力発電所としてギネス
  ブックに認定。
  ここで作られた電気は、東京電力管内で使用される電気の20%
  を占め、50万ボルト送電線により、山梨、沼津、神奈川方面へ
  送電される。

原子力発電所の建物内

  

原子力発電のしくみ
  原子炉内で直接蒸気を発生させる沸騰水型原子炉(BWR:Boiling
  Water Reactor)を採用。
  ウランが核分裂するときに発生する熱エネルギーによって、
  水を蒸気に変え、この蒸気でタービンを回し発電機で電気を
  作る。
  使い終わった蒸気は復水器で海水によって冷やされ(大量の水が
  必要なため、海岸に原子力発電所が設置される理由となっている)
  水に戻り、再び温められて原子炉へと戻っていく。
  
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原子炉圧力容器内の構造
放射性物質を閉じこめる壁
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厚さ190cmの鉄筋コンクリート製遮蔽壁
  
原子炉内の断面(上から見た模型・実物大で展示)
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燃料集合体
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燃料棒を約80本束ねてある。110万kW級では764体原子炉内にある。
  
原子炉内圧力容器
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厚さ16cmの鋼鉄製の容器、核分裂で発生する熱を取り出す装置。


新潟県中越沖地震後の様々な地震対策
地層に対する耐震対策
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耐震設計指針に基づき、発電所周辺の活断層(F-B断層、長岡
平野西縁断層帯)を評価し、基準値振動を策定

耐震対策例
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配管サポート、原子炉建家屋根トラス、排気筒、天井クレーン、
燃料取り替え機等設備の強化を実施し、安全性の向上を図る。




新潟県中越沖地震後、全原子炉稼働には至っていないが様々な対策を施し安全な設備、低炭素化時代(地球温暖化抑制)を目指したエネルギー資源として躍動している様子が窺えた。
ご案内いただいた東京電力社の方々に厚く御礼申し上げます。


日本海フィッシャーマンズ・ケープ内にて昼食後の、風の丘コレクションビレッジ風力発電施設見学報告については、次回Vol.4で報告予定。


東京コンクリート診断士会会員 仲田昌弘

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2010年12月06日

東京コンクリート診断士会第5回技術見学会報告 Vol.2

高田河川国道事務所管内には192橋のコンクリート橋が存在し、このうち134橋が海上部及び海岸線から700m以内の地域に設置されている。台風や冬季波浪の影響を直接受ける厳しい塩害環境下(波しぶきが直接橋にかかる状況)で、58橋が塩害による損傷が確認され、その中には損傷著しい橋梁が8橋存在しているとのことである。
平成21年度に特に塩害損傷の大きい4橋(筒石橋、能生大橋、両鬼橋、青梅跨線橋)の橋梁架替等の恒久対策を実施することになった。この内の能生大橋の劣化状況を見学することができた。
参考資料:4橋の所在地(PDF)


能生大橋の概要
 ・1966年竣工(橋齢44年)
 ・単純PCポステンT桁橋5連
 ・1等級橋
 ・設計活荷重 TL-20
 ・橋長 140.5m

塗装記録
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補修記録
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解体工事現場にて、劣化・損傷状況を確認

コンクリート床板の塩害・鉄筋の腐食
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コンクリート床板の塩害・疲労劣化
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橋脚のひび割れ
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橋桁のひび割れ
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塗装内部も塩害を受ける
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塩害・アルカリ骨材反応・凍害複合劣化
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コンクリート橋の塩害対策用暴露供試体を見学。
電気防食、塗料、塗装鉄筋、特殊コンクリート等種々の対策を施したコンクリート供試体を暴露試験している。
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飛来塩分測定装置
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1日目最後の見学場所は、新名立大橋。

新名立大橋の概要
 ・竣工平成13年
 ・PC単純ポストテンションバイプレ方式中空床板橋
 ・橋長 75.3m
 ・電気防食設備



塩害による劣化・損傷を抑制するために「電気防食工法」を用いて、橋梁の長寿命化を図っている。防食設備及び遠隔監視システムを見学した。
参考資料:遠隔監視システム(PDF)


天候にも恵まれ・・・、無事1日目の見学を終え、バスは一路、宿泊場所「くわどり湯ったり村」へ。
閑静な里山に開設された温泉施設。
新潟の美味しいお米、料理、そしてお酒を堪能し、楽しい懇親会が開かれた。

2日目の見学報告へ続く・・・。


東京コンクリート診断士会正会員 仲田昌弘


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2010年12月02日

東京コンクリート診断士会第5回技術見学会報告 Vol.1

平成22年11月1日〜2日の2日間の日程で東京コンクリート診断士会主催第5回技術見学会が行われた。

【見学予定場所】
■1日(月)
新潟県内国道8号線名立大橋、弁天大橋、能生大橋
それぞれのコンクリートの塩害による変状状況と各種電気紡食施工状況
■2日(火)
東京電力柏崎刈羽原子力発電所
風の丘柏崎コレクションビレッジ風力発電
月夜野IC付近凍結防止剤による塩害状況


新宿駅西口をAM8:00に出発、一路新潟へ。総勢25名の好奇心の塊の技術人達が集合!
外は強い雨降りである。見学地の天気予報は、横殴りの雨模様の絵・・・。さてどんなことに???


道の駅(うみてらす名立)にて昼食、美味しいタイ飯とカニ汁をいただく。
到着時には薄日がさす穏やかな天候だったが、食事終了後に突如大荒れの雨模様に様変わり!!!大急ぎでバスに乗り込み、視察場所に移動。日本海の冬の天候は猫の目状態・・・。
名立大橋に着き、ご案内いただいた高田河川国道事務所の方々と合流すると雨はスーットあがってしまった。弁天島には見事な虹まで登場である。

  

1.弁天大橋電気防食設備
  橋名:弁天大橋
  型式:単純PCプレテンT桁橋
  竣工:1972年
  橋長:340m
  支間割:17@20.0m
  全幅員:11.353m

 電気防食設備
  第8径間
    施工年度:1995年
    方  式:チタンメッシュ方式(1)、チタングリッド方式(2)、亜鉛板方式(3)
  第12径間
    施工年度:2003年
    方  式:チタングリッド方式(4)

※方式についての詳細は、PDFファイルをご参照ください。

弁天大橋全容
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左:チタンメッシュ方式、中:チタングリッド方式、右:亜鉛板方式
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日本海(海塩粒子飛来)
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アルカリ骨材反応(黒姫山の火山岩を成分とする骨材が、
塩害との複合劣化でアルカリ骨反応をもたらす。)
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脱塩工法
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脱塩工法
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電気化学的脱塩の原理

電気化学的脱塩はデサリネーションとも呼ばれ、コンクリート中の鋼材を陰極とし、コンクリート構造物の外側を陽極として、直流電流を通電することにより、陰イオンである塩素イオンをコンクリート外へ電気永動し、さらに水の電気分解によって水素イオンを生成して、コンクリートのアルカリ度を高めることによって、鋼材に対するコンクリートの防食性能を高めるものである。

電気化学的脱塩を施工に先立って調査した塩分浸透量は、1.2kg/m3と鋼材発錆限界塩分量を大幅に超えていた。コンクリート単位表面積当たり通電量を1.0A±0.2A/m2とし、積算通電日数46日として、可溶性塩分・固定塩分ともに減少した。

※電気防食:「Think about コンクリート」2009/7/6〜21 コンクリート構造物の電気防食工法「エルガード工法」を掲載していますのでご参照下さい。(http://sts-concrete.seesaa.net/archives/200907-1.html


日本海の自然の驚異を感じるとともに、改めて海洋構造物の劣化対策の重要性を受け止めた。
バスの窓越しからの冬の日本海、自然の厳しさを垣間見ることができた。

次回は、能生大橋の掛け替え工事の現場からの報告をお伝えする予定である。(東京コンクリート診断士会正会員 仲田昌弘)
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2010年10月25日

「生コンの品質確保」その3

“大林組技術研究所 十河担当部長に聞く”
「耐久性優先の時代に」・・・から感じた事

 
生コンへの要求品質は、強度とスランプ優先から発注者や設計者の考え方が耐久性優先へと変わり、その耐久性能を明確にしなければならなくなった。

土木学会の示方書も耐久性の責任を明確になるよう設計照査が導入。
セメント、骨材、混和材料、水等の原材料の種類と水・セメント比の配合がわからなければ設計段階での耐久性を照査することができない。その要求が生コンの計量印字記録の提示につながっている。生コン生産者は、コンクリートの耐久性能確保の観点から、より詳細な情報を設計者や施工者に伝えなければならない状況にある。
 

“強度とスランプもコンクリートの性能ではあるが、それだけではコンクリートの耐久性能の要求は満たせない。そうした要求に対し、生コンは品質のバリエーションをもっと増やし、フレキシブルに対応してほしい。そういう意味でJISのメニューだけでいいのか?”と提言…
 

技術の進歩とともに生コンクリートに要求される性能は多岐に渡る。JISのメニューへの課題と生産者のJISさえ守ればいいという認識の低さは払拭しなければならない。
ゼネコンからは、顧客ニーズに対応する工場から購入したいとの要請がある。協組共販の生コン業界はどう対応すべきか?顧客のニーズをどう考えるのか?課題であろう。


ゼネコンが直接生コンを造らなくなってからかなりの年数を経て、ゼネコンで生コンを造れる人がほとんどいない状況にある。レディーミクストコンクリートが規格化され完全分業化された現在、購入者から頼りになる生コン工場になるべく切磋琢磨してほしいとの要請が挙がる。前述した“JISのメニュー”に縛られることなく、購入者とよく協議をし、現場にマッチしたコンクリートを納品する仕組みがあっても良いと思う。


“そろそろ現場検査をやらなくても生コンを買える仕組みにしていくべき。コンクリートの品質は練った段階でほぼ決まっており、それが適切に管理されているという証明ができれば、検査は不要だ。性善説で生コンを買いたい”

と筆者は最後を閉めている。



生コン生産者の倫理観、コンプライアンス等、高い意識の持ち合わせも必須であるが、現場での作業(生コン打設・養生など…)のレベルアップも当然必要、両者一体での意識改革がポイントであろう。耐久性を重要視し、消費者を保護することを優先して対処する心を持って“生コンクリートの品質確保と保証制度”を構築してはどうだろうか・・・


新東産業株式会社 仲田昌弘 日本リスクマネジメント協会正会員


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2010年10月12日

六会事件を振り返る「生コンの品質確保」(コンクリート工業新聞特集より)

“なぜ違法行為をやったのか?”


六会事件を振り返り、経緯とその後の対応処置、組合の取組・姿勢(危機管理・保証体系の整備等)について信頼回復への道筋作りを前述しました。
業界に大きな波紋と課題を残しましたが、違法行為を行う“問題の芽”は摘まれるのであろうか?その態勢に焦点を当てて見ました。


・六会社の認識は、先ず違法性がないと判断している。そして、1.リサイクルで環境保全に役立つこと、2.コストダウンになることを理由に行為を正当化しようとしている。
同社は高強度コンクリートの大臣認定を単独で取得する知力・技術力を備えており、未認可の溶融スラグの使用及び未記載の行為について、違法であることの認識を持たなかったことは容認されにくい。
 →当時湘南エリアの需要の低迷、積算価格が¥10,000を割る市況下、使用することで総額1,000万円程度のコストダウン効果が期待された。
 →「コストダウンを優先させた」と市場関係者の共通の見方
・ゼネコンから、「問題を起こしたら、再生できないくらい重いペナルティーを課すべき」との指摘や、「生コンは他のJIS製品とは異なりリコールできない。供給側のモラル向上が必要。これまでの様々な事故に対する防止策を監査項目に加えてほしい」との要望がある。
 →厳しい指摘と要請
・自由競争を制限し、品質管理の優秀性等自助努力や独自性を打ち消す協組共販が減価低減に走らせる要因との声も聞く。
 →業界関係者の懸念
・急激な需要の減少で生コン製造業者の収益は悪化。ゼネコンの指摘、単価も厳しく、生コン製造業者は一段のコストダウン(収益改善)に迫られる。環境対策への要請(排出の削減、リサイクル、リユース)にも対処しなければならない。
 →生コン製造業者の厳しい立場
・再発防止に取組むが「問題の原因は多様で複雑。工場間の技術力、知力、モラルも一
  律でない」監査だけでは防ぎきれない。
 →組合幹部の声
・問題の芽を摘む態勢作りが課題
 →JIS改正で情報開示の仕組みが取り入れられたが、開示情報の範囲の拡大・情報 照査の仕組みの導入をも防止策の一つ
 →骨材生産者の製造トラブルで供給が滞り、JISマークを表示できなくなる事態に直面、出荷停止を決断。以前だったら「骨材を黙って変えて出荷」も…、コンプライアンスと計量印字記録の提出の義務化が違反抑制につながったのか?


NGを未然に防ぐためのルールやシステムはその為にあります。「大事は理、小事は情をもって処す」という言葉があります。人には理と情とどちらも必要ですが、ここ一番では理が優先されます。日本では「大事は情、小事を理」で処していることが少なくありません。その結果として一大事を引き起こしている事態が散見します。「大事を情」を是とすることは許されません。少なくともリーダーは心を鬼にして「NO」という勇気が必要です。
リーダーがモラルの向上、高い意識を持つことが、今大切であると思わざるを得ません。

新東産業株式会社 日本リスクマネジメント協会正会員 仲田昌弘
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2010年09月27日

生コンの品質確保について

コンクリート工業新聞の特集に「生コンの品質確保」に関する記事が掲載されました。
“六会事件を振り返る”とある、その概要を紹介します。


溶融スラグ骨材を生コンの原材料として不正使用した六会事件、あれから2年が経過しました。生コン協同組合による補償も始まって、事件は終息に向かいつつあります。
しかし、その後もセメント銘柄の虚偽報告やコンクリートの強度不足等といった問題、JIS認証の取消、等々不正問題が頻発しており、六会事件の教訓が十分に活かされていないという情けない状況が続いております。

生コンユーザーの不信も解消されず、再発防止策の徹底や協組による品質保証の強化等、安心・安全を担保する措置を求める声が依然として強くあります。
六会事件は、当事者が市場から退出し、生コン協組が対応を迫られた初のケースで、あらためて振り返ると次の様であります。

・2008年6月六会社社長が溶融スラグ骨材を使用し、クレームが発生した旨の報告
 を組合にする。使用期間が1年に及ぶことから事態は深刻化する
・7月に国交省が記者発表、六会社は操業を停止、JIS認証とマル適マークの取消
・神奈川、湘南両協組が国交省の要請を受けて現場特定に着手、納入物件は373に
 上った特定作業と並行して専門委員会を設置し、原因究明と構造体品質への
 影響を調査
・国交省の委員会から安全性には問題はないとの見解、建築基準法の37条違反等
 を適法化
・認定申請、強度試験、分析試験等、調査費用は、大手生コン会社を中心に両協組
 の組合員が出資設立した藤沢生コンに六会社を売却をし、その費用を充当した
・事後処理の最大の難関、補償対応である。風評被害等による施主の損害賠償を
 含めると、数百億円とも言われていた。
 補償対象を是正工事費、諸経費に絞り込み補償スキームを検討。補償限度総枠を
 20億円と設定、5年分割で支払うことを決定、補償額の査定を学識者、設計実務
 者、弁護士で構成する第三者機関にお願いしゼネコンに補償内容を説明
・協組が解散や破たんをした場合、組合員の責任は出資金の範囲で済む。解散すべ
 きとの声もあったが、「協組は共販事業で、工場を決めて売っている。組合が
 補償するといいながら、責任を負わず解散すれば共販システムが根底から崩れる」
 と共販システムを守る
・ゼネコンによる出荷工場の指定希望が増えている。協組共販の運営に影響が出て
 いる。「品質管理の徹底」信頼の回復と共販への理解を深める意向である


危機管理、保証体系の整備はこれから。
工組と両協組は共同でワーキンググループを立ち上げ、「危機管理マニュアル」の作成に着手。工場への強制立入も検討課題、骨子をまとめ上期中に成案化するとのこと。
六会事件は重い課題を業界に突き付けたが、それを乗り越えてはじめて信頼回復への道が開く…とありました。

次回は、「なぜ違法行為をやったのか」について記載します。
引き続き、品質確保についての特集記事から概要を紹介していきます。


新東産業株式会社 日本リスクマネジメント協会正会員 仲田昌弘




    
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2010年07月26日

一般社団法人「日本コンクリート診断士会」設立

平成22年7月24日、社団法人日本コンクリート工学協会会議室に於いて、一般社団法人「日本コンクリート診断士会」設立総会が開催された。各地区の診断士会役員の方々、コンクリート診断士等約80人が参集した。

開会に当たり、当会設立準備会の主査を務めて頂いた小野定氏(東京コンクリート診断士会会長)から、日本コンクリート診断士会設立の趣意説明があった。概要を以下に示す。
コンクリート構造物の維持管理に関する技術進歩は著しいものがあり、個々の診断士が最新技術を常に保有・活用して社会に貢献していくためには、各地区に設立されているコンクリート診断士会の活動を強力に支援しつつ、効率的な連携によりコンクリート診断士の技術向上を図り、構造物管理者へのPR等を通じて診断士制度の目的達成のための組織的な活動を通して社会貢献をするとともに、診断士の社会的信用・地位を向上することが必要である。
この目的を遂行するために各地区診断士会の活動を「全国組織に拡大させ、より強固なものとする」ことが必須である。
全国的な診断士資格を有する者の集まりとして「日本コンクリート診断士会」を設立する。
その後、東京工業大学の林教授が議長に選出され、議事が進められた。
初代会長に林静雄氏(東京工業大学・教授)、副会長に小野定氏(東京コンクリート診断士会会長)、佐藤嘉昭氏(NPO法人大分県コンクリート診断士会理事長)が選任された。
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また、各地区の診断士会会長の方々に理事役員として就いて頂くこととなった。
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学術会員には、林静雄氏(東京工業大学教授)、佐藤嘉昭氏(大分大学教授)、魚本健人氏(芝浦工業大学教授)等が参画して頂くこととなった。
各議事について粛々と議論し、承認を得て無事「日本コンクリート診断士会」設立となった。

設立記念特別講演として、「社会基盤整備について」の演題で、土木学会会長・阪田憲次氏より講演。その後、設立パーティ・懇親会が開催された。
小野定副会長が東京コンクリート診断士会を平成17年に設立して以来5年、念願の全国組織の構築である。


☆お知らせ☆
「コンクリート診断士友の会」の名称で、twitterを始めました!どんな内容をどれくらいつぶやいていけるかわかりませんが、コンクリート診断士同士の情報交換、情報共有の場として活用していただけたらと思います。
フォロワー大募集!!

http://twitter.com/club_concrete/

(仲田 昌弘)


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2010年06月07日

海外トピックス 『シンガポールのコンクリート建設近況事情』

今回は、シンガポールの生コンクリート業界の近況情勢をご紹介します。

シンガポールは、大きな島(シンガポール島:東西42kmx南北23km、面積966q²)に人口約500万人が生活をしている都市国家です。東京都23区内のエリアを想像していただくと比較し易いかと思います。


大きな地図で見る

シンガポールの生コンクリートの市場規模は概ね次の通りです。

生コンクリートの重要:820万m³ / 年(2009年実績)
※リーマンショックの影響を受け、コンクリート重要ピーク時の60%程度にまで縮小しているとのことです。
※生コンクリートの単価@¥6,000/m³、セメントの単価が@¥6,500/t とのことです。
生コンクリート工場:11の企業が従事し、延べ50工場が稼働
※1工場当たりの月出荷量は、約1万3,600m³相当) 

コンクリートの配合は、圧縮強度35N/mm²〜40N/mm²が出荷量全体の80%を占めています。工事内容が大きな都市プロジェクトに係る建設工事(高層建造物)が主であることに因るものです。
使用されているコンクリート混和剤は減水剤が主流(赤道直下に位置するので、凍結融解による凍害の耐久性を考慮する必要がないため、AEコンクリートではない。但し、年間を通じて暑中コンクリートです。)ナフタレン系をベースとする混和剤が汎用的に用いられています。
高性能減水剤(ポリカルボン酸系)の混和剤は、圧縮強度60N/mm²以上80N/mm²の高強度用に限定して使用されています。混和剤の価格が高価なことと骨材事情によるとのことです。
(骨材は、大半がマレーシア、ベトナムからの輸入品。粒度、粒径等の品質は上質ではない。写真参照)
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コンクリート工場は、生コンクリート工場が10工場、プレキャスト工場が5工場、が一区画に集合(コンクリートの生産基地の様相を呈し、この基地が東西南北の4ヶ所に配置され、そこを拠点として製品が供給されています。)。工場の生産設備・施設は、日本国内の大型工場並のりっぱな配備です。
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1区画に集約された工場
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生コン工場内の様子

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プレキャスト工場内の様子

マリーナベイエリアの開発プロジェクト風景
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本余談本
世界一の貿易港、湾内に停泊する船舶の数に圧倒されますexclamation×2
香港を抜いてNo.1のハブ港、東西貿易の拠点となって、今年3月に公表したシティー・オブ・ロンドンの金融センターランキングでは、ロンドン、ニューヨーク、香港に次ぐ世界第4位と評価されている。
ベイエリアの開発計画は続くが…


以上、シンガポールの近況レポートをご紹介しました。(仲田 昌弘)

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